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春分の日の鳥取行き

もはや記憶は曖昧だが思い出してみると。。
かつて教育の仕事とミュージシャンの二足の草鞋を履いていたことがあった。

その時、ある生徒(Kくん、当時小5)が父親の交通事故死をきっかけに不登校になった。
当時、肥後橋にあった臨床的に教育の研究をされている機関があり、そこの三島照雄先生に相談した。


鳥取の八東町というところに、不登校になった子どもたちを、自宅に引き取り、一緒に生活し、ポニーとの触れ合い(乗馬訓練とお世話)と中国山地の大自然の中で暮らすことで、子どもたちが本来持っている逞しさを引き出して、巣立たせている人を紹介していただいた。

 

その人は石井博史(通称ヒロさん)という人で、福島県にある教育団体「ハーモニーセンター」で長く職員をされていて退職金代わりにいただいたポニー四頭と共に鳥取県八東町に帰郷されて「ハーモニィカレッジ」(当時任意団体)を設立したのだ。
その寄宿塾(自宅)に行くと、誰がヒロさんの子どもで、誰が寄宿生なのかわからないくらい、分け隔てなく暮らされていたのを覚えている。

 

私は自分の車にKくんを乗せて、楽しいとこがあるから一緒に遊びに行こう!って八東に行った。 
到着するとヒロさんにKくんを預けて、返す刀で西宮に戻ったのだ。
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週間後、Kくんは一人で列車で戻ってきた。僕は三宮駅に迎えに行った。
彼は見違えるほど、元気な笑顔で帰ってきた。彼はいま、獣医師となっている。

 

これがハーモニィカレッジとの始まりだった。
以降、毎夏、10年前後?西宮の子どもたち(毎回2030人くらいだったかな?)を八東にバスを仕立てて連れて行って、ポニーと触れ合わせていた。
さらには毎秋に、ジャズと武満徹をこよなく愛していたヒロさんの肝煎りで、コンサートもさせていただいていたのだ。
Vn/
渡辺剛、Ds/堀越彰、Ts/荒崎英一郎、Vn/Yu-MaVn/CHINAMIBs/中嶋明彦など、ハーモニィカレッジの活動に賛同してくれた多くのトップミュージシャンたちとともに訪れたものだ。
そんな中、私のプライベートな環境が激変し、しばらく八東を訪れることができていなかったのだが、数年前に、ハーモニィカレッジの創立20周年式典で久しぶりに演奏した。

 

ヒロさんが他界して78年になるだろうか。その時の喪失感はとても大きかった。私が当時、この世で一番尊敬していた人だったからだ。
ヒロさんは、いつもニコニコ笑っていた。私の全てを受け入れてくれた。

 

還暦を待たずに他界したヒロさんの跡は、ハーモニィカレッジ創立からヒロさんを支え続けてきた(ぼく流に言えば、お弟子さんの)

大堀貴士さん(通称シュート)と中野裕道さん(通称チョロ)がいま立派に継いでいる。

創立当時は若かった彼らも、今は立派で神々しく見える。

そしてこの二人を若いスタッフたち(阪本宜之さん、通称タイタンなど)がさらに支える。

素晴らしい循環であり、ヒロさんの遺伝子が確実に生き残っている。
牧場を運営するということは、1365日、晴れの日も雨の日も雪深き日も、朝と夕に「馬餌」を作り、歩かせ、語りかけ、惜しみない愛情を馬に注がなくてはならない過酷なことだ。本当に頑張られている。

 

NPO法人として未来へのビジョンを内外に打ち出す「Visionary 2.0」のご案内を受けて、一会員として演奏なしで参加するつもりでシュートに電話したところ、演奏してほしい旨、うかがい、昨日、伊藤愛子・うえかわひろみ・Mina3シンガーを連れて参加したのだ。

唄ったのはオリジナルの「勇気を出して」と、創立してしばらくたってハーモニィカレッジにプレゼントしたオリジナル「因幡のハーモニー」、そしてヒロさんが長年奉職した福島県にちなんで板橋文夫さんの「ふくしまの春」、リクエストの「ルート66」を3名の「西宮んズ」で唄ってもらったのだ。(3声はど迫力でした、笑)

 

ヒロさんの夢を長年支えてきた奥様の石井優子さん(通称ゆうちゃん)について。
まず、他人の子どもを我が子とともに、同じ屋根の下で育てた張本人です。
彼女は、今、牧場内に、園舎を持たない幼稚園を開園して3年になる。先日の卒園式には、卒園生が一人で馬に乗って入場したそうだ。馬に触れ合うと、子どもは逞しくなるのだ。
ゆうちゃんは、いつも声がでかい(笑)。

いつも笑顔だ。

そして菩薩様のような「オーラ」を発する人だ。
ゆうちゃんに会うと、僕はなぜか身が引き締まる。
昨日は、久しぶりの「因幡のハーモニー」を喜んでくれた。
彼女は、自分ではなく、シュートたちに、ハーモニィカレッジの未来を託したところが素晴らしいと思う。
ゆうちゃんが幼稚園の園長先生、っていうのが実にしっくりくる。
園が牧場内で、馬と触れ合う教育を受けることができて園生たちは幸せ者だと思う。

 

さて、春分の日は、朝8時半に西宮を出発した。
鳥取道を通らず、戸倉峠を越えて八東入りした。
やはりこの峠道がいい。


発表会の後、ハーモニィカレッジのある「空山牧場」にみんなで行った。
スタッフは全員発表会にいて、牧場は無人かと思いきや、溝上久美ちゃん(通称ペーター)という笑顔が素晴らしいスタッフがいた。

彼女は体調がよくないということで牧場事務室にいらっしゃったのだが、わざわざ出てきてくれて「馬、乗りますか!」と言ってくれた。
Mina
ちゃんと愛子さんには、馬に乗ってほしかったので、すごく嬉しかった。
みんな、とても喜んでくれた。


馬に乗ると、見える景色が変わるのだ。
現実の風景も、そして、物事の事象の景色も。
言葉を持たないポニーと意思を通わさないと乗ることはできない。

すごくありふれた言葉だが、ハーモニィカレッジに初めて行った人は、みんな「衝撃」を受ける。
そこには「笑顔」「思いやり」「他者承認」が普通に存在し、「私利私慾」や「怒り」「嫉み」などとという感情は誰も持ち合わせていない。

私自身、ここのところ、心乱れる出来事が多かっただけに、今回のハーモニィカレッジ訪問はとても有意義だった。
都会で世俗の垢に塗れ過ぎている自分を、浄化し、再発見し、エネルギーを浴びることのできる僕の「心のふるさと」だ。

 

今回、鳥取音楽街道を引き受けてくださったハーモニィカレッジ。
また、毎年のお付き合いが復活できそうで、めちゃくちゃ嬉しい。

僕は、ここに、まずは僕のお弟子さんたちを連れて行きたい。
そして、かつてここで一緒に演奏した仲間も再び同行してもらいたい。
さらには、全国の音楽街道の仲間もここに集結して、八東の空気を吸って欲しい。

できればこの秋にでもコンサートをしようと思っている。

 

NPO法人ハーモニィカレッジの全てのみなさん、たいへんお世話になりました。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

 

文中の「八東町」(はっとうちょう)は、今は「八頭町」(やずちょう)に合併されて名称はありません。
検索するときは「鳥取県八頭町」です。
また空山牧場は所在地としては「鳥取市」です。

もし、NPO法人ハーモニィカレッジを応援してやろう!と思われた方は、僕と同じ「一般会員」(年会費5000円ポッキリ)になられるといいように思います。詳しくはHPをご覧ください。
http://www.harmony-college.or.jp/